堺谷徹宏の
グルマン365
パセリカレーをときどき作る。平松洋子さんのお馴染みのレシピだけれど、これは美味しいし、簡単だし、何というか、ストイックで気分が上がる。パセリと肉だけという言い切りも素晴らしい。実際にはスパイスやトマト缶、仕上げにすりおろしたにんにくなんかも使うのだけれど、細かいことはいいんでないかい。大きく、パセリと肉だけ。そういうところも好きだ。肉は合い挽きを勧めているので、しばらく合い挽きで作っていた。これでも十分美味しいのだけれど、パセリカレーは平松さんがモンゴルなんかを旅しているときに実際に食べたか、イメージしたかしたらしいので、そのときの肉のイメージは羊だったのかもと思い、今回はラムの切り落としを買い込んだ。
包丁で叩きながら、ざくざくと粗く切って鍋へ。平松さんお勧めのS&Bの赤缶から大さじ3杯程度スパイスを肉に振りかける。火を入れると肉が油でコーティングされてスパイスの味が肉に入りにくいんだそうだ。今回も言う通りに作る。この段階で好きに他のスパイスを加えてもいいことになっているので、ナツメグとマスタードシード、チリペッパー、クローブを加えて肉に混ぜ込んでいく。ある程度混ざったら、点火して炒める。半分以上肉の色が変わってきたら、ここでざく切りにした大量のパセリを投入する。パパイヤ鈴木の頭3個分くらいのパセリ。初めて作ったときには、ぼくの生涯でこんなに大量のパセリを一度に料理したことがない!と感じ入ったが、もうそんなふうには思わない。思わないどころか、このパセリカレーはわが家の定番メニュウにしたので、パセリが足りないと困るからと、狭い自家菜園にパセリの苗を3株植えて春先から育てていた。案の定、近所のスーパーであるだけのパセリを買ったが、足りない気がして、帰ってきて菜園のパセリも10枝くらい摘んだ。とにかく、3回くらいに分けてパセリを鍋に投入する。これがダイナミックで実にいい。何かものすごい、いい仕事をしている錯覚がある。
今回はラムだからいつもよりさらに美味しいことは間違いない。ウチの家族は好き嫌いがないので、助かる。ラムはみんなの大好物でもある。こんなカレーばかり作っているから、普通のルウのカレーはあまり歓迎されなくなっている。それはぼくの責任でもある。責任を果たすためにぼくは今日もキッチンに立つ。
堺谷徹宏
堺谷徹宏 プロフィール
グルマン・ゴーズ・トゥ・トウキョウ株式会社代表取締役。1960年北海道生まれ。明治大学文学部を卒業後、出版界へ。サラリーマン向け雑誌やモノ・カタログ雑誌、女性誌、単行本などの編集を経て、食品の通販事業に携わる。バイヤーとして全国をまわり、地域産品を掘り起こしてカタログで紹介・販売するだけでなく、富裕層へ向けたオリジナル商品の開発と販売にも注力。後に、カタログやWEBページのコピー執筆やビジュアルディレクションを通して、購買客へ美味をわかりやすく楽しく伝えることを主眼に置き、フードデザイニストとして独立。バイヤー、コピーライターとしての技も磨きつつ、隠れた美味を探しに今日も東へ西へ。
●お仕事のご依頼などはメールにてお願いいたします。tetsu.sakaiya@gmail.com
バイヤー堺谷徹宏(さかいやてつひろ)の
おすすめ商品セレクション
オーシャンドリームという、華やかな社名の代表である、松浦康夫さんと初めて会ったのは、もう7、8年前の都内の商談会。松浦さんは愛媛県の八幡浜で水産加工業を生業とする、海の男だ。当時は、はもの加工品が良かった。はもと言えば、関西の夏の食べ物、風物詩であることに今も変わりはないが、松浦さんが作った「はものかば焼」は、大阪で食べる鱧鍋や京都の錦市場で串刺しで売られている蒲焼とは、明らかに趣が違った。素材の持つ独特の生臭さのようなものを完全に取り去って、旨みを凝縮させて、甘辛くしっかりじっくり焼き上げることで新しい価値を作り上げていたのだ。当時担当していたカタログに掲載して販売した。ぼくは明らかに松浦さんの強く前を向く姿勢に打たれていた。この人は国内の水産加工に光をともすんじゃないかと。
再会したのは、都内で催された展示会。こぢんまりとした出展ブースには強いこだわりが感じられる、いくつもの商品が並んでいた。
「商品がずいぶん増えたんですね」
「そうなんです」
そのままギフトに使えそうな綺麗なパッケージを纏った鱧のお惣菜が目に飛び込んできた。4種類の鱧のお惣菜がそれぞれの特徴を引き出すような色合いの紙に包まれている。「はものゆずまぶし」「はものみかんまぶし」「はものしいたけまぶし」そして「はものさんしょまぶし」の4種類。前後するが、オーシャンドリームがある八幡浜は知られざる鱧の産地。愛媛県と大分県に挟まれた豊後水道は太平洋から流れ込む黒潮とともに、旬の魚が回遊してくる絶好の漁場。八幡浜の魚市場では毎朝八幡浜漁港に水揚げされたばかりの魚が所狭しと並ぶ。その中にはこの4種類の惣菜の主原料、縁起が良いとされる、「瀬戸のみぞれ鱧」も。この海の幸であるみぞれ鱧に山の幸、柚子やみかん、椎茸、山椒を合わせたのがはもまぶしのシリーズ。豊かな八幡浜の海の幸と山の幸の融合をコンセプトにしたもの作りだ。
里山、里海の恵み。
甘めの味付けに温もりがいっぱい。
癒される1杯、そして2杯……。
炊き立てのご飯に混ぜるだけの調理で、里山、里海の恵みを一緒に味わえる。1袋で対応するご飯は茶碗2杯ほどだから、2人ならば食べ切れる量の設定は悪くない。お茶漬けや佃煮としての食べ方もオーシャンドリームはすすめる。4種類それぞれを見てみる。
みかんまぶし → これはなかなか斬新な組み合わせ。みかんの皮を一緒に炊いていることで柑橘の爽やかな香りが漂う。
しいたけまぶし → 一番安定感のある味わい。椎茸と鱧はよく合う。
さんしょまぶし → いずれも料亭風の味わいだけれど、取り合わせから見てこれが一番料亭感が強い。
ゆずまぶし → 柚子の皮のシロップを漬けを使用しているので、甘めの仕上がり。
「これそれぞれ混ぜてもいいんじゃないか」
ご飯茶碗中盛り1杯で0.4合。1袋で2杯なので、0.8合分とすると例えば、4種類を全部混ぜ合わせて使うとすると3.2合分のご飯があればいい。しっかりと調味されたはもの他、椎茸、柚子、山椒にみかん。それぞれがハーモナイズしながら、にぎやかなどこにもない混ぜご飯の完成。そういうことがお客様の手元でアレンジされるといい。甘めなので、万能ネギや茗荷、カイワレなどの少し辛みのある薬味を多めにトッピングするのがぼくのおすすめです。
今回はオーシャンドリーム・松浦さんの商品をもう1品。ぼくの個人的な感覚から言えば、天然の方が美味しいと思うのは鳴門のたこくらいのものだ。鳴門海峡は波が荒いだけでなく、海流が複雑でそこに生息するたこはその強いうねりに流されまいと必死に岩にしがみついているらしい。そういう話を聞けば、なるほどと思う。生存競争もさぞ厳しかろうと。これはしっかりとした歯応え、食べ応えのある、旨味がちゃんと載ったたこになるに決まっている。もとい、天然魚と養殖魚の話だった。天然魚は自由である。あちらこちら好き勝手に泳いで獲物を探す。いつでも獲物にありつける幸運な日ばかりではないから、空腹の日もあるはず。満腹の状態ではない鯛はそれなりに消耗しながら毎日を過ごす。故に天然もののクオリティは安定しない。
養殖事業者からそう聞いた。鵜呑みにするわけではないけれど、このところの養殖事業者の高い意識に触れると納得もする。かつてはできるだけ太るように脂が乗るように、病気をしないようにと薬剤を含むいろいろなものを餌に添加して与えていた。だから「養殖ものは薬臭い」「養殖ものは脂が載りすぎている」「養殖ものは旨みがない」などの批判的な意見が多く、養殖ものは天然ものに劣ると言われていた。魚種にもよるが、各地で漁獲高が年々減り続けたために、漁獲を安定させるために養殖が増えていった。その過程で、魚の健康を考えて環境を整備し、地場の産品を餌に生かすなどの方法が検討され、養殖技術が飛躍的に進化していった。農家でも同様の研鑽が行われてきたが、水産業もだ。日本の一次産業に従事する人たちの意識の高さには本当に舌を巻く。現在では養殖が進んでいる魚種の漁獲高は安定し、魚のクオリティも高いレベルで均一化していると言われている。
いとも簡単に鯛めしができてしまうことを
内緒にしたくなるほどの美味しいクオリティ
話が長くなりましたが、今回ご紹介するもう一つの商品の主原料の真鯛は養殖です。現在の養殖鯛の優位性をお伝えしたかったので失礼いたしました。この商品には愛媛・瀬戸内海の栄養豊富な海で餌や環境にこだわり、丁寧に育て上げた真鯛を使用しています。地元八幡浜で水揚げして、そこから数分のところにあるオーシャンドリームの加工場で新鮮なまま、加工されます。完成したレトルトパックの「愛媛真鯛の炙り鯛めしの素」の食べ方は至って簡単。お米2合を研いで30分ほど浸水させてから、水を切って炊飯器へ。その中に鯛めしの素を出汁と一緒に全部入れて炊き上げるだけ。炊き上がり時刻が近づく頃には醤油ベースのなんともいい香りが漂います。炊き上がったら、全体をさっくりと混ぜ合わせてからいただきます。
簡単、便利がメリットの商品なのに
掟破りのアレンジ提案です
試食と称して何度か炊き上げていただくうちに、更なる美味を、その先の満足を得たいがために思いついたことがあります。それは、スーパーでパックに詰めて売られているアラも含めた鯛のブツ切りを使うこと。1尾分で約300円。この「愛媛真鯛の炙り鯛めしの素」は大変美味しいのだけれど、もう少し鯛そのものを味わいたいとぼくは考えたわけです。ここからがかなり適当な調理になります。米は3合に。そこにグリルで焼いた鯛のブツ切りを並べてレトルトパックの中身を全部投入。水を70〜80ml、醤油を大さじ1くらい、針生姜を少し加えて、スイッチオン。炊き上がって炊飯器の中をさっくりと混ぜ合わせると、鯛がいっぱい。半分以上は骨で食べにくいかもしれない。
デフォルトがすばらしいので
アレンジも生きるという商品のセオリー
器に盛り付ける。大葉を刻んでトッピング。ひと口食べて料亭風の上品な香りと味わいはデフォルトのままで、それに鯛の身もご飯にたくさん絡んでいて、これは悪くない。骨はたくさんあるけれど、鯛は小骨が少なく、太くて大きい骨が多いので食べながらの骨取りはさほど面倒でもない。家族がすこぶる喜んだ。3合あるので、大食いの息子2人でも十分な量であった。たまたまうまくいったアレンジだったけれど、これに気を良くして同じ調理を繰り返したが、都度家族の賞賛を浴びた。ちょっと大袈裟だけれど。こんなことができるのも、デフォルトの商品が実によくできているから。愛媛真鯛の頭部と中骨を大量に使ってとった出汁がいい。余計なものが添加されていないので後味が実にいい。手間をかけずにデフォルトの商品そのものも、気分とノリでいろいろなアレンジも、どちらもおすすめ。ちょっと、炊き込みご飯のイメージが変わるかもしれません。
おすすめ商品セレクションアーカイブ
たけもと農場の
リゾットMAMMA
能登きのこ
石川県産のイタリア米で作る本格きのこリゾット。さらっとしたお米なので調理してもべたつきにくくさっぱりといただけます。しいたけ、ポルチーニ、ひらたけ3種のきのこの旨みも格別です。調理時間は約20分。
逸味潮屋の
天然能登
寒ぶりのたたき
半解凍になったら、スライス。わさび醤油でも、付属の源助大根おろし入りのポン酢でも美味しいけれど、まずは何もつけずにそのままでどうぞ。能登の揚浜式の塩をふんだんに使うことで引き出された旨みが格別です。
大つるの
淡甘(うすあま)あずき
丹波大納言小豆、和三盆糖にほんの少しだけの塩。この3つの材料に手間ひまを加えて丁寧に丁寧に銅釜で炊き上げた小豆のお甘です。小豆ってこんなに美味しかった? 思わず首を傾げてしまうクオリティをご堪能ください。
グランフェスタの
バターサンド・ホリディ
パッションフルーツ、マンゴー、黒糖塩キャラメル、シークヮーサー、ドラゴンフルーツ&バナナ、パイナップル。宮古島特産の素材を楽しめる6種類のバターサンド。ひと口食べるだけでリゾート気分を味わえます。
こまめ小町の
天然乾青のり(ご飯用)
収穫した青のりにできるだけダメージを与えないように、海水で洗い、その後で真水をかけ、干場のロープに渡しかけて天日に干す。この作業を全部手で行うという手間のかかる作り方をした天然の青のり。ものが違います。